2017年JPS展『東京都知事賞』

「不安」 後藤 芙美子

 

 

 

 

 

 

 

 

『素朴な姿は宝もの』

 15年ほど前からアジアの辺境に生きる人々を撮っている。厳しい環境の中でたくましく生きる姿に感動し、作品づくりを目指している。その素朴な姿を撮った写真は、私の宝ものである。だから、そのデータはなかなか捨てられなく、外付けハードディスクは増える一方。少し整理しなければと思って、2008年のインドを見ていたら、心引かれる写真があった。それが今回の作品である。たくさんのイヤリングやネックレスをつけ、派手な衣装を着ている男の子と女の子。困ったような、とまどったような、あるいは目をそらして素知らぬ顔をしている。その不安な心を、クラブの先生の指導をいただいて、2枚のモノクロで現すことにした。 余分なところは切り落として、顔の表情だけの作品になった。その結果、データ量は小さくなってしまったが、そのままプリンターで打って応募した。9年間眠っていたものが、思いもよらぬ入賞となり、本当に驚いた。ラボで指定の大きさに焼き、納めた後にJPS事務局から、さらに大きく伸ばすので、データを送ってほしいと連絡を受けた時には、データが小さいことが気になった。会場で写真を見るまでは、まさに作品のタイトルどおり「不安」の毎日だった。しかし、何とか見られる形になっていたので、少し安堵した。

『自分の写真で見てもらいたいところは?』

 インドはバングラディシュに次いで好きな国だ。向こうから撮ってくれと欲求されるほどフレンドリーである。今も都会から一歩奥に入ると、昔ながらの衣装を着て、素朴な生活をしており、撮っていて楽しい。今回の作品については、反省点はたくさんある。撮影の時に作品を予測して撮るのは本当にむずかしい。近くで見ると粗ばかりなので、最低2メートルは離れて見てくださいね。