・気になる最新カメラ 〜キヤノンEOS R5〜 JPS正会員:秦 達夫
前回号ではNikon D6を紹介いたしました。今回はキヤノンの最新ミラーレス機EOS R5を紹介いたします。紹介するのはJPS正会員の秦達夫氏です。秦氏は2021JPS展の審査員でもあります。
キヤノンがフルサイズ一眼ミラーレスカメラに本格参入したのは、今回紹介するEOS-R5の前身モデルEOS-R(2018年秋)からです。EOS-Rがデビューしたとき、キヤノンから他社へカメラシステムを移行した方も多かったのではないでしょうか? その理由は様々だと思いますが、EOS-R5の登場は、他社へ乗り換えたことを後悔する出来栄えと言っても過言ではない、凄いカメラに仕上がっています。
違う言い方をすると、このカメラの登場はプロカメラマン達が諸手を挙げて喜んで良いのか? と言いたくなるほどの完成度に仕上がっています。その意味は、今まで経験や技術がなければ撮影する事が出来なかった状況も、EOS-R5ならばシャッターを押すだけで撮影出来てしまうからです。プロカメラマンにとっては、もっと凄い世界を表現できるようになるカメラの登場であると言えましょう。それでは、お話を始めたいと思います。
何が凄いのか?と、興味が移っていくと思います。僕が考える代表的な凄いポイントが2つあります。その第一はAF性能です。暗所でもピントが合います。もはや暗視カメラと言っても良いでしょう。先代のEOS-Rも発売当初AFが凄いと言われていましたが、僕のEOS-Rは少し暗くなると、AFは役に立ちませんでした。ところがEOS-R5は日没30分後の薄暗い中でも、AFで正確にピントが合います。夕景の撮影をいつ止めたら良いのか困ってしまうくらい、暗所でのAFは強くなっています。
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瞳AFは動物にも有効でカモの目をAFポイントが追従している事がファインダーで確認出来る。遠く離れると鳥を認識し身体をAFポイントが追従して行くようになる。
カメラ機種名:Canon EOS R5
撮影モード:絞り優先AE
Tv(シャッター速度):1/80
Av(絞り数値):4.0
測光方式:評価測光
露出補正:+1/3
レンズ:RF24-105mm F4 L IS USM
検出する被写体:動物優先
測距エリア選択モード:顔+追尾優先AF
そして瞳AFの進化です。動物達の瞳や身体を検知しAFで捉えます。電子シャッターに切り替える必要がありますが、高速連写モードにすると秒間20コマで追尾撮影が可能です。EOS-1DxMarkⅢ搭載のAFアルゴリズムを採用しているので、その信頼はお墨付きです。それプラスCFexpressカードを使用する条件がつきますが、RAWデータで180枚、JPEGラージファインで350枚の連続撮影も可能です。動画からワンショットを抜き出すような撮影が可能と言うことになります。
話が逸れますが、8K30P動画を撮影出来るため、動画から理論的に35M相当の静止画を抜き出すことも可能です。それらに付け加え、かねてから定評のあったレンズ内手ブレ補正と、今回キヤノン初のボディ内手ぶれ補正を組み合わせた協調ブレ制御により、最大8段分のブレを吸収します。なおこの数字は、レンズの組み合わせにもよるので注意してください。
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車のヘッドライトにビックリしている鹿。EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USMを手持ち撮影。ISO51200開放1/15秒でもブレのないシャープな画質で捉える事が出来ている。
カメラ機種名:Canon EOS R5
撮影モード:絞り優先AE
Tv(シャッター速度):1/15
Av(絞り数値):5.6
測光方式:評価測光
露出補正:-1
ISO感度:51200
レンズ:EF100-400mm f/4.5-5.6L IS II USM
測距エリア選択モード:顔+追尾優先AF
第二ポイントは高感度特性です。常用最高感度はなんとISO51200。拡張子を入れる事で、ISO1024000まで上げる事が可能になります。高感度域の画質評価は様々な論点があると思いますが、僕が使用した感じからすると、ISO6400までは通常の撮影であれば問題の無い画質だと言えます。画質よりも写っていることが優先させる撮影であれば、ISO12800、いやISO25600でも、充分使えるデータを作り出す事が可能だと思います。これにノイズディダクションやDLO(デジタルレンズオプティマイザー)を多用すれば、今までにない高感度での高画質を手に入れることが可能になる訳です。
このように性能の事ばかりが注目されてしまいますが、実は僕がもっとも嬉しかった事は背面ダイヤルとマルチコントローラの採用です。これでEOS-5D・7Dユーザーは、なんの抵抗もなくEOS-R5へ移行する事が出来ると思います。そしてCFexpressカードとSDカードの併用になりますが、ダブルスロット化による安心感。ミラーをなくしたことによるフランジバックのショート化がもたらしたレンズ設計の自由化。今まで開発が難しかった夢のようなレンズが高画質でバンバン開発されてくる事でしょう。また従来のレンズ資産も、マウントアダプターを使用する事で、活かす事が出来ます。(ユーザー側の視点からものを言わせてもらうと、もう少し安価でも良いのではと言いたくなるのですけどね…)
今回のインプレッションは、マウントアダプターを使用していますが、なんの遜色もない使い勝手でした。ドロップインのPLフィルターやNDフィルターを使用する事が出来るので、レンズ口径の違いから生まれるフィルター径の相違もなくなり、複数のフィルターを持つ必要がなくなります。それからフィルターが装着出来ない通称出目金レンズでも、フィルターを使用する事が可能になります。これで間違いなく表現の幅は広がったと言い切れます。
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カメラ機種:Canon EOS R5
撮影モード:絞り優先AE
Tv(シャッター速度): 0.5
Av(絞り数値):11
測光方式:評価測光
露出補正:-2/3
ISO感度:200
レンズ :RF24-105mm F4 L IS USM
ホワイトバランス: 太陽光
ピクチャースタイル: 風景
弟分といえるEOS-R6は画素数こそ低いものの、高感度特性はEOS-R5を凌ぐ出来栄えだと聞いています。こんなカメラに出会うことができる時代に、現役写真家として活動できていることにワクワクが止まりません。
最後にプチ情報です。一般カメラ販売店にこのカメラを注文しても、年内の納品は難しいそうです。あしからず。
秦 達夫
プロフィール
長野県飯田市遠山郷(1970/4/20生)。自動車販売会社・バイクショップに勤務。後に家業を継ぐ為に写真の勉強を始め自分の可能性を感じ写真家を志す。写真家竹内敏信氏の助手を経て独立。故郷の湯立神楽「霜月祭」を取材した『あらびるでな』で第八回藤本四八写真賞受賞。同タイトルの写真集を信濃毎日新聞社から出版。小説家・新田次郎氏『孤高の人』の加藤文太郎に共感し、『アラスカ物語』のフランク安田を尊敬している。
日本写真家協会会員・日本写真協会会員・Foxfireフィールドスタッフ
写真集『山岳島_屋久島』『RainyDays屋久島』『New Zealand』、他多数。
写真展情報
写真展『 Traces of Yakushima 』
○キヤノンギャラリー銀座
2021年5月20日(木)~5月26日(水)営業時間 10:30~18:30 日曜日/祝日定休 最終日15:00まで
〒104-0061 東京都中央区銀座3-9-7トレランス銀座ビルディング1F
TEL 03-3542-1860
○キヤノンギャラリー大阪
2021年6月24日(木)~6月30日(水)営業時間 10:00~18:00 日曜日/祝日定休 最終日 15:00まで
〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島3-2-4 中之島フェスティバルタワー・ウエスト1F
TEL 06-7739-2125
概要
今回の展示は6×6判モノクロフィルムで屋久島を撮影した作品35点です。
「癒やし」のイメージが先行する屋久島ですが、私は樹齢千年以上の巨樹を眺めていると威厳や尊厳そして恐れを感じました。その気配は縦も横もないスクエア画面、そして色情報をそぎ落としたモノクロフィルムでこそ表現できると確信し撮影してまいりました。『Traces of Yakushima』
直訳すると屋久島の痕跡や踏み跡となりますが、私は「屋久島の気配」とさせていただきました。潤いのある森。人間とは異なる時間軸に生きる巨樹。自然こそ偉大な芸術家なのだと改めて思わせる造形美。全35点は、それらを写し止めた作品群です。
写真集発売
https://www.photohata.com/product-page/traces-of-yakushima
Official HP:https://www.photohata.com/