5.著作者人格権

自分の作品が勝手に内容を変えて使われたら、誰でも不愉快でしょうし、場合によっては苦痛に耐えられないこともあるでしょう。
著作者人格権は著作者だけ(一身専属性)のもので、他人に譲ることはできません。作者の死後は遺族や、作者が遺言で指定したもの及び罰則が著作者の人格的利益守ります。
著作者人格権は、公表権、氏名表示権、同一性保持権の三つを内容としていますが、荘厳な宗教音楽をストリップの伴奏にするなどのように、作品に直接手を加えなくても、作者の名誉を傷つけるような使い方をすることも著作者人格権の侵害になります。

1) 公表権

作品を公表するかしないかを自分で決める権利です。机の引出にしまってある原稿は初めから公表しないつもりで書いたのか、気に入らなくてボツにするのか、あるいはまだ加筆するつもりなのか、それは作者本人にしかわからないことです。それを無断で公表するのは作者に大変な精神的苦痛を与える恐れがあるので、その公表を決めるのは作者だけであると規定されています。一度公表された作品にはこの権利は及びません。
画家が絵を売った場合、買った人がその絵を展示して公表することに同意していると見なされます。なお、生前に公表されなかったいわゆる遺著(作)は、作者が生きていたらその公表を拒むだろうという事情がなければ、著作権者(遺族など)の許可を受けて公表してさしつかえありません。

2) 氏名表示権

氏名表示権は、作品(著作物)の公表にあたって作者(著作者)名を表示するか表示しないかを自分で決める権利です。公表権と違って、作品を初めて世に出すときだけでなく、作品を使う(著作物を利用する)たびに問題になりますが、使う側は特に注文がついた場合は別ですが、いちいち作者に伺いをたてる必要はなく、すでに作者が表示している例にならって表示するならばさしつかえありません。例えば『銭形平次捕物控』を出版するときに作者名を「野村胡堂」とするのはかまいませんが、本名だからといって「野村長一」とすることは許されません。

3) 同一性保持権

同一性保持権は、作品の内容やタイトルを勝手に変えたり、トリミングをさせない権利です。小説にしろ写真にしろ、作品には作者の人格が反映されているのですから、作者の意向に反して変えられることがないようにして、その人格的利益を保護するのが主旨です。
たとえ変えた方がよくなると思っても、誤字脱字の訂正などは別にして、作者の同意のない改変(作者の死後は意を害すると認められる改変)は許されません。