JPS展メールマガジン特集 - 公益社団法人日本写真家協会

ちょっとレンズの話

写真・文：写真展事業委員会委員　小林みのる

エッジの甘いオールドレンズはコントラストが低いので背面液晶でのピント合わせは至難の技です。電子ビューファインダーとそれを支えるリグを付けたら合体ロボ感が半端ないですw

・そのレンズの断捨離、ちょっと待ったぁっ！

このコロナ禍で遠出ができなかったこともあり、自分の地元を見つめ直すきっかけになりました。そして自分の機材に関しても巣篭もりの最中に考え直す事にもなりました。断捨離の最中に写真学校時代から使っていたレンズに触れたのです。「1日フィルム10本撮っていらっしゃい」の課題に毎日毎日胸に下げて撮り続けていました。そして帰るとフィルム現像、コンタクト、プリント… 大変でしたが充実した日々が蘇ります。その思い出の相棒たち。カールツアイスの25mm、35mm、50mm、85mm、80-200mm、45mmTessarのパンケーキレンズも転がり出てきました。
世の中は昭和ブーム、カメラ界隈ではオールドレンズ・カメラブーム。私も遅ればせながらその流れに乗っかってみようと思い立ちました。

SIGMAfpLとCarlZeissを結ぶレイコールのマウントアダプター。信頼と品質の純日本製です。

・お父さんのそのレンズ、ちょっとデジカメに付けてみない？

昭和時代の絞りリングが付いたマニュアルフォーカスのレンズだったらほとんどのレンズがマウントアダプターでもう一度デジカメで復活させることができます。プログラムAEなどは使えないので自分で絞りを選ぶ必要があります。

もちろんマニュアルフォーカスなので自分でピントを合わせなければなりません。改めて最新デジカメの瞳優先オートフォーカスってスゲーなー、と感心させられたりします。なので出会い頭にバシバシ撮るのではなく、しっかり狙って絞りとピントを合わせてジワッとシャッターを切る感じです。そんなリズムの写真も良いものです。

・アダプターひとつ買えばすぐタイムスリップ

最新のデジタルカメラとオールドレンズを繋ぐマウントアダプターがあれば話は終わりです。でもこのアダプターのメーカー選びにも今回学びがありました。ネット通販では廉価なアダプターが多く売られています。お洒落なパッケージの商品を試しにひとつポチしたのですが、これが良くありません。工作精度が悪いせいかロックが甘く、付けたレンズが回ってしまいます。これでは何かの拍子にレンズが落ちてしまいます。それになんだか無限遠も怪しい…。そこで改めて求めたのは信頼性と精度と品質。純日本製、宮本製作所のRAYQUALを選びました。カチッっと止まりグラつきも一切ありません。無限遠にもピシャリと焦点が合って安心感が全然違います。ご自分の大切なレンズ資産です。信頼できる機材で活かして下さい。

宮本製作所　RAYQUAL（レイクオール）公式サイト：http://rayqual.com/

・ホワホワな優しい描写

やはりオールドレンズを使う楽しさは今のレンズにない描写でしょう。最新のデジタルカメラのレンズはコーティングや特殊ガラス、非球面レンズ研磨などの様々な技術革新によって逆光時や明暗差の激しい状況でもキチンと解像します。

オールドレンズは逆光では霞に包まれたようになったり、ピントが合ったエッジの際がジワッと滲んだり、四隅が暗く落ち込んだりと様々な変化があります。今の技術的な価値観で見るとそれは”不具合”として扱われてしまいかねません。

しかしそのいつもと違う写りを”楽しい”と思えるようになると、今度は新たに”オールドレンズ沼”というものが待ち受けています。いらっしゃいませ。

・オールドレンズに酔いしれるとハマる落とし穴

オールドレンズの独特な描写ですがそればかりに頼っていると結局マンネリになってしまいます。”スパイス”程度に留めておく方がよいでしょう。スパイスが主役の料理などありません。大切なのはあくまでも素材、つまり写真の内容です。画像編集ソフトのエフェクトや特殊フィルターなどを使う時と同じように”この効果が無かった時この写真は面白いのか？”という問いかけを続けるべきです。

機材による特殊性やソフトのテクニックの臭いが強い写真は”胸ヤケ”と共に飽きられてしまいます。そんなこと言っている私の作例もちょっと効果が大きめの写真を選んでいますねー。使い始めなのでホワホワを面白がっている時期なんです。もうちょっと撮り込んでいくと落ち着いてくることでしょう。

そして何よりの失敗は断捨離が一つも達成できなかった事です。それどころか「ビューファインダー」や「リグ」を買い込んでかえって荷物が増えてしまいました。

一生片付きそうもありませんな、この部屋…