2022年07月01日 和田直樹
アイルランド民謡「ロンドンデリーの歌」の旋律を聴くと、あの緑豊かで空が広い穏やかな風景が思い浮かぶ。エンヤやU2などの音楽、ジョナサン・スウィフトの『ガリバー旅行記』、詩人であり劇作家のウィリアム・バトラー・イェイツの妖精譚。作品には作者の人生経験はもちろん、生まれ育ち、生活してきた日常が礎にある。雲が速く流れ、空の表情は刻々と変わる。真っ青な海かと思えば、灰色の雲が広くおおい海は藍色となる。波のしぶきの強弱から風を感じる。どれも英国に隣接する島国のアイルランドの大地が織りなす。その風土が作品の根底に流れ、人々が引き込まれ、心を震わす。
私は約20年前に女性誌の取材で初めてアイルランドを訪れた。それ以来、いつも温かく迎え入れてくれる人々の笑顔と景色の表情が心地よかった。その居心地のよさに魅かれてアイルランドへの旅を重ねた。
今回の写真展では西部の大西洋沿岸部の光景を中心に、遺跡や小島で暮らす家族の姿を展示する。アイルランドの風土と気質を感じていただけたら嬉しいかぎりだ。
●THE GALLERY セレクション展 和田直樹「Irish skies –創作の泉–」
会 場:ニコンプラザ東京THE GALLERY、ニコンプラザ大阪THE GALLERY
展示期間
東 京: 2022年7月12日(火)~7月25日(月)
大 阪: 2022年9月 1日(木)~9月14日(水)
開館時間:10時30分~18時30分※(日曜日休館/最終日は15時まで)
●作者プロフィール
1964年大阪府池田市生まれ。大阪府立箕面高等学校卒業。日本大学芸術学部写真学科卒業。(株)電通のスタッフフォトグラファーを経て独立。俳優、作家、アーティスト、政治家、農家のポートレートを広告や出版物で長年撮影。個展「標高1500mの水」「京桜」「上海逍遥」等を開催。2012年ニコンサロン連続企画展「Remembrance3.11」に「惨禍、三陸沿岸部の定点記録」で参画。アイルランド、屋久島、上海、三陸沿岸部の被災地などをライフワークとして撮り続けている。東京工芸大学非常勤講師。ニコンカレッジ講師。全日本写真連盟関東本部委員。公益社団法人日本写真家協会(JPS)会員。