JPS展メールマガジン特集 Vol.8

深度合成とギミック画像の作り出しかた

深度合成ソフト“ヘリコンフォーカス”、AIソフトが搭載された“ルミナー4”を使う

JPS正会員 奈良岡 忠

 

 昨今は、撮って出しと見間違えるほどの合成やギミックを用いた写真が登場しています。とくに奥までピントの合うような深度合成や、存在しないものを存在させるギミックは、かなり細かく根気のいる作業が伴うと思われます。ところが、最近は大変便利なソフトが登場しました。
 そこで、深度合成ソフト“ヘリコンフォーカス”とAIソフトが搭載された“ルミナー4”を使用して、ギミックな画像を作ります。

 私は小さなモデルカーの撮影が多いので、常にパンフォーカスの仕上がりを求められます。ポジフィルム時代は4×5でのアオリ撮影、デジタルになってからシフトレンズを使用しておりました。ただ、どうしても画像の歪みなどが出て、満足な仕上がりではありませんでした。
 約5,6年前になりますか。カメラ内やPhotoshopで深度合成ができるようになりました。どちらも標準レンズ以降でしか合成が出来ず、マクロ的な小さな物は不可能でした。それが、“ヘリコンフォーカス”の登場で可能となったのです。

それでは実際の作業をご紹介しましょう。

 

★作業方法★

作例のモデルは約11センチぐらいの大きさ

 

通常の撮影では手前までしかフォーカスが来ません

 

“ヘリコンフォーカス”を使用するとこのようなパンフォーカスの仕上がりになります

 

モデルを手前から撮影。ピントをずらしながら後ろまで6カット撮影します

 

撮影をした6カットの画像をヘリコンフォーカスのフォルダに入れて「レンダリング」をします

 

左がレンダリング前、右がレンダリング終了した画像

 

パンフォーカスの画像が出来上がりました、この画像を“ルミナー4”に移動

 

“ルミナー4”のソフトに画像を入れ「AI拡張スカイ」というタグを選ぶと山の画像が組み込まれています。そこで「Mountains3」という冬山を入れてみました

 

ソフトの中にあるオブジェクトの配置を調節して車とのスケール感を合わせ一旦、保存します

 

次に「AIスカイ・リフレースメント」のタグを開きます。この中には青空から夕景まで様々な画像が名前付きで入ってます。今回は「Stock Sunset」という空を選びました。画像の山の稜線に合わせる事や空の露出や画像全体の濃度まで変えられるので各スライダーで調節します

 

画像が完成。パスを切ったり面倒な作業もAI知能が機能し、車のフロントガラスの反射まで移し込んでくれるという優れソフトです

 

さらにやりすぎの感はありますが鳥の群れまでも挿入する事もできます(月や虹、飛んでいる飛行機なども)。ギミック的な画像制作に準ずればお絵描き的な楽しい画像が短時間に制作出来るというソフトです

 

●成果品の一例●

 

 模型などを仕事で撮影をしているカメラマンにとっては、カタログなどのイメージ写真を作る事は楽しい作業であります。本来ならば描き割り等を制作して、撮影物の後ろに置くという手法をとって来ましたが、この“ヘリコンフォーカス”と“ルミナー4”のソフトの相互利用で凄く分野が広がり、短時間で異空間の画像が作れるという画期的な事になりました(もっとも、ややイラスト的な感は逃れませんが)。

 

これからも、さらにAI機能が満載したソフトが登場してくるのではないでしょうか。