「熊切大輔のポートレートスナップ写真の表現」
最も取り組みやすく、そして最も難しいとも言われるスナップ写真。そんなスナップ写真の作品作りについてお話します。
私は漠然と撮影するのではなくテーマを持って撮影しています。さらにそのテーマを階層的にわけて考えています。まず大きなテーマとしてスナップの役割そのものを考えます。スナップ写真は時代を写すという「記録」の役割があります。例えばマスク姿の人々が写れば、コロナ禍に苦しんだ「今」が写っている事になるでしょう。画になるかならないかではなく、それをどうすれば画にできるかを考えます。マスク姿の被写体が一人だと画になりにくいですが、集団だとどうなるでしょう。それは一つの社会現象として表現できるのではないでしょうか?
次に「重きをおいているポイントはどこで撮るか」です。私は世界の都市も撮影していますが、やはり最も理解している地元をしっかりと撮ること、被写体として大事にする事が重要と考えます。オリンピックをきっかけに激変を続ける地元、東京はまさに変わりゆく過程を撮れるのは今しかない「瞬間の表情」を写す意味があるのです。
それらを何で表現するか。私は街の特徴を形どるのは、そこに生きる「人」だと考えています。街ごとにその個性は変化します。人々の服装や年齢層など様々な要素で個性は構成されているのです。
それらの要素が一体となってまさに「東京の今」をスナップで切り撮り表現する事ができるのです。何を撮りどう表現したいのか、考えながらシャッターを押す。それがあなたらしいスナップ作品を生み出すこととなるのです。そんな個性溢れる作品をJPS展ではお待ちしております。奮ってご参加ください。
◇熊切大輔
1969年東京生まれ。東京工芸大学短期大学部にて写真表現を学ぶ。
卒業後、日刊ゲンダイ写真部に入社し主に政治、事件、プロ野球では巨人軍担当。その後フリーとなり雑誌や広告、写真誌など様々なジャンルで活動中。東京をスナップ写真で切り撮った作品を、メインテーマに写真集、写真展などで発表を続けている。また写真講師として大学などで指導も⾏う。公益社団法人日本写真家協会 写真展事業委員会担当理事