2022年11月07日 薈田純一
壁面長70メートル、高さ4.7メートルの地下空間に、画聖・雪舟が創りだした12の庭園と３つの実景が一堂に会する
室町時代の画僧・雪舟等楊は六点の国宝を含む五十点あまりの真筆を残しているが、造園においても仮山水の築造に新基軸を打ち出し豪放で閑雅な庭園を残している。これらには雪舟作庭のはっきりした史実が残るものはなく、信憑性があるものは数少ない。
だが真偽のほどが定かでなくても、あるいは時が庭園の形を変えていたとしても、REAL（本物）であることよりLIVE（生きている）であることが重要ではないだろうか。
彼の水墨画と同じように、その茫漠とした凄みに何を見出せばいいのか、室町時代の空間様式を共有しない私たちは戸惑う。だが私が思うに雪舟の庭は、おまえは何処から来て、何処にいて、何処へ行こうとしているのかと、鑑賞者の「見当識」を問うているのではないか。
禅宗の庭には、明示されていない「ここから観ろ」という視点が一つあるという。ところが雪舟の庭には、さまざまに布置されたいくつもの視点があるように思う。一つの視点の考えを捨て、多視点で複眼化したとき、観るものを空間に惹きこむ雪舟の庭の全貌がはじめて見えてくる。
薈田純一写真展「SESSHU GARDENS/雪舟庭園」
会 期：2022年11月15日（火）～20日（日）
時 間：午前10時~午後6時（初日17時から 最終日 午後3時まで）
会 場：横浜市民ギャラリー B1F ギャラリー https://ycag.yafjp.org
横浜市西区宮崎町26番地1 TEL：045-315-2828
