2024年12月12日 上吉川祐一
私は皮革産業が盛んな兵庫県たつの市で生まれ育った。
幼少期から皮革工場は身近にあり、河原に革を干していたり、皮を後ろに積んだ軽トラックやフォークリフトが道を走っている光景が印象に残っている。
兵庫県は日本一の牛革の生産地だ。主に、たつの市にある松原・誉田(ほんだ)・沢田地区、隣の姫路市では高木・御着(ごちゃく)・網干(あぼし)などの生産地が有名で、全国に流通する牛革の約8割が県内で生産されている。
私の住むたつの市は兵庫県南西部に位置し、瀬戸内海に面している。自然が豊かで、特に里山や海岸などが美しい地域だ。北の山地から南の瀬戸内海まで南北に長い地形の中を、揖保川、林田川という2本の川が流れている。豊かな水が、醤油、手延素麺、そして皮革というたつの市の伝統的な三大地場産業をもたらした。
写真家として、初めてタンナー(※)の工場に入らせてもらったのは2009年のこと。山積みにされたホルスタイン牛の原皮を見て圧倒されたが、無意識にカメラを構えたことを今でも覚えている。その後も、牛の「皮」が「革」となり、製品となっていく過程に魅力を感じ、牧場からタンナーまで、15年ほど取材を続けてきた。牛が生まれてから革製品が仕上がるまでには、実に多くの職人が関わっている。
地方に暮らす表現者として、この地域のどんな役に立てるのだろう。そう考えた時、写真で地域の魅力を内外に伝えることだと思った。海外の絶景や全国の素晴らしい風景も見てみたいが、私にとって、地元が一番好きな場所で、もっとも魅力を感じる場所なのだ。
写真を通して、そんな「いのち」の物語が、一人でも多くの人に伝わればと願っています。
上吉川 祐一 写真展『かわと生きる』
会 期:2024年12月21日(土)~ 2025年1月9日(木)
時 間:11:00~19:00(最終日は16:00まで 会期中無休)
会 場:αプラザ(福岡天神)※ソニーストア福岡天神内
住 所:福岡市中央区今泉1-19-22
URL: https://ers.sony.jp/SEvent/
入館料:無料
作品点数:約30点・展示する写真は全て革に写真印刷した作品
上吉川祐一(かみよしかわゆういち)プロフィール
1978年、兵庫県たつの市生まれ。7年間のスタジオ勤務を経て薬師山写真館を設立。ポートレートからドキュメンタリーなど企業の広告写真も手がけるほか、写真を通じた地域創生に注力。
2024年に写真集『かわと生きる』、写真展『いのち牛革製品ができるまで』(富士フイルムフォトサロン 東京、札幌、大阪)、Leofotoギャラリーで開催。
国内外のフォトコンテストで受賞歴多数。
WPCワールドフォトグラフィックカップ日本代表
公益社団法人 日本写真家協会会員