リコーイメージング株式会社 PENTAX FILM DUPRICATOR
フィルムを手軽にデジタルアーカイブ化
レポートと撮影:木村正博
協力・画像提供:リコーイメージング株式会社
今回取り上げたPENTAX FILM DUPRICATORを初めて眼にしたのは一昨年、2014年のCP+会場のリコーブースでした。
様々なデジタルカメラやレンズの新製品が並ぶ一角に、見るからにアナログ的な外見が異彩を放ち、訪れた人々の好奇心を引き付け、そこに開発者の坪田宣政氏の姿がありました。フィルムカメラで写真の洗礼を受けた筆者も当然興味津々、そこで説明を受けましたが、フィルムのアーカイブ化にスキャナーでなくデジタルカメラを使うという発想が新鮮で、今回4×5判以下のフィルムサイズに対応できるものの試作が進行中という話を聞き、試作機の試用と開発に至った経緯等を伺いました。
開発の経緯と直面した問題点
リコーイメージング株式会社日本営業部カスタマーコミュニュケーション部原 清文副部長、マーケティング統括部坪田宣政氏から、試作機を前に開発に至った経緯等を伺うと概ね次のような答えが返ってきました。
・スキャナー方式に対して作業効率が高い。
・基本的なセットをしてしまえば、高い専門知識を持たない人でも作業が行える。
・高画素のデジタル一眼レフとマクロレンズ、専用フラッシュがあればメーカーを問わず作業できる、といった点をキーワードとして開発したところ、現在の形になったとのことでした。
もっともその背景には126フィルムで写真の世界に入り、その後様々なフォーマットを経て現在に至っている坪田氏の、思い入れのあるフィルムを手軽にデジタルアーカイブ化したい、という強い思いがあったのも確かなようです。ただ、いよいよ試作にかかると思わぬ問題に直面し、その第一が本体に大きな面積を占めているビューカメラの袋蛇腹を連ねたような部分です。
本来この部分は通常の蛇腹を使うつもりでいたところ、一眼レフメーカー各社が接写用のベローズを発売しなくなったため、やむなくこの形を取らざるを得なかったとのことです。また4×5判用の試作に当たっては、フィルムホルダー部にアンチニュートンガラスを使うつもりが適切なものがなく、ガラス作りの段階から始めなければならない苦労もあったようです。
試用レポート
フィルムの清掃
フィルムの複写で気を使うのがホコリや汚れで、その旨を質問すると入手しやすい薬用アルコールとティッシュまたはトイレットペーパーで拭うのが効果的で、静電気除去ブラシを用意するといいとのことでした。
※編集部注:ガラス面の清掃を怠ると右の写真のようにゴミの嵐に……
フィルムの装着
今回試用させて頂いたのは4×5判フォーマット以下に対応したFILM DUPLICATORで、写真2で分かる通り先行発売されている6×9判以下のものに比べると一回り以上大きくなっています。
複写するオリジナルフィルムは、フィルムホルダー4×5判に装着して乳白アクリル板の右側に差し込み、光源にフラッシュを用いて撮影します。光源にフラッシュを使用する理由は光質の安定性、作業効率の高さで、アルカリ単三型乾電池で2000カット近く撮影できるコストパフォーマンスの高さとのことです。
フィルムホルダー4×5判は、フィルムの平面性保持のため両面にアンチニュートンガラスを用い、4×5判フィルムを並列に2枚並べることのできる4×5判用、ブローニー120/220用、35㎜用の樹脂製フィルムアダプターが用意されていて、撮影が終了したカットを横にスライドさせ、素早く次のカットをカメラのフレーム内に収められるようになっています。ここで注目したいのが、4×5判フィルムのノッチコードが写し込めるようになっていることで、仮に表裏を逆に撮影してしまっても後で見分けやすくなっています。
フィルムホルダー4×5判は、フィルムの平面性保持のため両面にアンチニュートンガラスを用い、4×5判フィルムを並列に2枚並べることのできる4×5判用、ブローニー120/220用、35㎜用の樹脂製フィルムアダプターが用意されていて、撮影が終了したカットを横にスライドさせ、素早く次のカットをカメラのフレーム内に収められるようになっています。ここで注目したいのが、4×5判フィルムのノッチコードが写し込めるようになっていることで、仮に表裏を逆に撮影してしまっても後で見分けやすくなっています。
撮影時のWB
フラッシュを使っての撮影でのWBはAUTO WB 、プリセットWB、色温度設定のいずれでもいいとのことで、今回はAUTO WBで行いましたが大きな色の偏りはありませんでした。この辺にもデジタルのよさがあり、RAWで撮影しておけば後で微調整が利き、デュープフィルムとは作業効率が格段に違うことを実感しました。
専用フラッシュと汎用フラッシュとの違い
撮影に使用するフラッシュは、TTL制御が行える専用のものがあるに越したことはありませんが、マニュアルモードで光量が変えられ、スレーブ機能がある汎用フラッシュも使用できます。このページTOP写真の手前側、6×9判以下用のカメラとフラッシュの組み合わせがその例で、カメラの内蔵フラッシュで撮影用フラッシュを同調させ、試写をして適切な光量を設定すれば、倍率を変えない限りそのまま撮影することができます。
フォーマットによる違い
今回の試写では、撮影にPENTAX 645Z+smc PENTAX-FA645 MACRO 120㎜ F4と、フルサイズやAPS-Cのデジタル一眼レフを使いましたが、共に結果は満足できるものでした。ただ645Zは撮像素子の大きさがものをいい、拡大すると差が出るのは仕方ないところでしょう。またホコリ等も目立ち難く、後処理の面でも有利でした。なお使用するレンズは、フルサイズであれば50㎜クラスのマクロレンズが最適とのことです。
撮影時の絞り値
フィルム時代の複写は絞り込んで写すのが常でしたが、デジタルでは回折現象の影響を避けるためf5.6~f8で写すことを推奨するとのことで、指導に従った範囲の絞り値で撮影しています。
まとめ
フィルム時代にカメラメーカー製のスライドコピアや引き伸ばし機メーカーのフィルムデュプリケーター、デジタルになってスキャナーを使用したことがある私にとって、このPENTAX FILM DUPRICATORの作業効率のよさは目から鱗でした。撮影に入る前のフィルム清掃の手間は同じでも、フィルムを装着してしまえばわずかな時間で撮影が完了し、デュープフィルムのように現像が上がるまで結果を心配する必要がありません。
ただ、6×9判以下用と4×5判以下用では大きさがかなり違い、前者は個人の作品アーカイブ用として、企業等で様々なフォーマットに対応するには後者が適しているでしょう。
複写実例
4×5判カラーリバーサルフィルム
フィルム右肩のノッチコードがハッキリ見えています。(写真提供:足立 寛)
4×5判B&Wフィルム
画面全体がMに寄り、取り切れなかったホコリやスクラッチが見えます。画像処理を加え、M味を除くと共にホコリやスクラッチを除去しました。フィルム時代を思うと、こんなに簡単でいいのか? という思いがします。(写真提供:加藤雅昭)
35mmカラーリバーサルフィルム(コダクローム)
田沼武能氏撮影の、「南ア・ヨハネスブルグの幼稚園」懐かしいコダクローム独特の発色で、ホコリや汚れもなく保存状態のよさがうかがわれますが、ややM味が強くなってしまいました。処理ソフトでM味を抑え、明るさを修正しました。(写真提供:田沼武能)
35mmカラーリバーサルフィルム
PENTAX 645Z+smc PENTAX-FA645 MACRO 120㎜ F4の組み合わせで撮影したものです。撮像素子が大きい利点が画面に現れ、拡大しても滑らかなトーンが保たれ、レタッチも容易でした。(写真提供:柳川 勤)
PENTAX デュプリケーターの問い合わせ先は以下の通りです。
お客様相談センター
0570-001313
03-4330-0008
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土日祝日:10:00~17:00