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メッセージ

JPS会長あいさつ

公益社団法人 日本写真家協会 会長 田沼武能 TAKEYOSHI TANUMA

「Post-TSUNAMI」展 開催にあたって

2011年3月11日、日本は東日本大震災という未曾有の大震災に見舞われました。日本は地震列島と呼ばれるほど地震の多い国土です。西暦2000年以後だけでもマグニチュード7以上の地震が7回もおきています。

しかし、今回の地震は特別でした。マグニチュード9に加えて大津波が併発し、未曽有の大災害となったのです。その大津波の濁流は、水が到達してから車や家々を押し流すまでに2分とかからないほどの勢いで各所を襲いました。そして多くの人びとの生命から住んでいた家々、生活の場までも奪って行ったのです。

その被災地は南北に450キロメートルにも及び、日本が沈没したと言う人もいました。大津波は福島原子力発電所までも襲い、原子炉を破壊して放射能汚染による甚大な被害をもたらしました。

私ども日本写真家協会(JPS)は、1,700名の会員を擁するプロフェッショナルの団体です。東日本の被災地には119名の会員が住んでいました。なかには自身も被災しながら刻々と変貌する様相を懸命に写真で記録を続けていた会員もおり、また各地から取材に入った会員もいました。

JPSは、この未曽有の災害を記録した写真を、現在の人々や後世の人々に伝えるために写真展「生きる=Post-TSUNAMI」を企画し、一周年を契機に開催いたしました。写真展、写真集には、協会員に加えて地元のアマチュア写真家、メディアの取材した中から私どもの企画に沿う写真を提供していただきました。被災現場に住み、災害に遭遇した市民が撮った写真も貴重な記録です。その多くの写真の中から災禍を象徴する写真も選びました。

展示内容は、震災現場で茫然自失する被災者たち、ふるさとのかつてのよき時代の生活ぶり、伝統文化、美しい風土を記録した写真も組み込み、その後の復興再建に励む人々まで収録しています。

今回の東日本大震災には、ドイツを始め世界24カ国から1,200名を超える専門家が来日して、救援活動を行い、126カ国から物資や寄付金の支援をいただきました。その国々の方へのお礼と報告をかね、このフォトキナ2012年の会場に展示いたしました。一人でも多くの方にご高覧いただければ、協会としてこれに過ぎるものはございません。

文化庁長官あいさつ

祝 辞

平成二十四年九月
文化庁長官 近藤 誠一

日本は、2011年3月に発生した東日本大震災により、大きな被害を受けました。被災地では今なお以前の生活が取り戻せない方々もおられますが、日本は国を挙げて、復興に努めています。こうしたなか、大震災直後から、ドイツ連邦共和国をはじめ、世界中から物心両面で暖かい支援の手が差し伸べられていることに心から感謝申し上げます。

このたび公益社団法人日本写真家協会の主催により、写真展「『生きる』 — POST-TSUNAMI —」が開催されますことは誠に意義深いものと存じます。本展においては、「被災」「ふるさと」「生きる」の三部構成により、東日本大震災の惨状や復興を目指す被災地の人々の姿を捉えた写真の数々が展示されると伺っております。写真に映し出された被災地の深刻な状況は多くの方々の心を掴むとともに、苦難を乗り越えて生きようとする被災者の姿は鑑賞者の胸をうつことと存じます。本展では、プロのみならずアマチュアによる写真も展示されており、様々な立場の写真家が被災地でそれぞれの思いを抱えながら撮影した写真は、写真表現の深い可能性をも感じさせてくれることでしょう。

文化芸術は、私たちの心に安らぎと力を与え、明日への希望を与えてくれます。また、文化芸術の持つ創造性は、新しい価値を生み出し、人々の心をつなぐ機能も持っています。文化庁におきましては、文化の力で日本の復興と発展に寄与するべく力を尽くして参りたいと存じます。御来場の皆様方におかれましては、今後とも日本の力強い復興に御力添えをいただきますようお願い申し上げます。

ケルンメッセあいさつ

ご挨拶

マルクス・オスター
ケルンメッセ株式会社 展示部長

ケルンメッセを代表して、皆様方に心より歓迎を申し上げます。『生きる』写真展は、日本写真家協会の主催、株式会社タムロンの協賛で開催されます。この素晴らしい写真展を、フォトキナ2012の来場者の皆様にご覧いただくことができ、大変嬉しく思います。本写真展は、東日本大震災から一年となる2012年3月にまず東京で開催されました。日本以外ではフォトキナ2012で初めての開催となります。

『生きる』写真展で展示されている写真ほど、心を強く揺さぶられる震災の写真はありませんでした。震災をありのままに描き出した写真が心を揺さぶるのではありません。そうではなく、被災された人々が営む日常を写す写真こそが、特別な魅力を生み出し、写真が持つ力を見る人に感じさせるのです。

震災後、被災地の人々が日常を取り戻していく喜びと精神的な強さが、これらの写真からは生々しく感じられます。これらの写真は、撮影者の内面を伝えると同時に、彼らが置かれていた状況を強く刻印しています。また、我々に内省を促し、写真に写った人々に対する共感を誘います。

本写真展についてさらに特筆すべきは、プロカメラマンのみならず、アマチュア写真家が撮影した写真も多数含み、彼らの感じたことや、プライベートな瞬間を見事に写し取っていることです。技術的に完璧ではなくても、自然に撮影されたそうした写真こそが、最も心を揺さぶることもあるのです。

ご列席の皆様、今回の『生きる』写真展のような写真展もまた、フォトキナの魅力を生み出す源泉だといえます。なぜなら、我々の業界、フォト&イメージング業界では、技術や製品だけで成立しているわけではないからです。

写真は、人々の感情も写し撮ります。写真の中に切り取られる感情、写真と結びついた個人的な感情、写真を見ている人々の内面で生まれる感情。フォトキナは、そうした人々の感情を反映した展示会にしたいと考えており、見事に実現しています。

フォトキナは、世界に類を見ない、技術動向と技術革新の国際的なプラットフォームです。しかし、同時に、写真の楽しさや、クリエイティブかつエモーショナルに写真技術と関わる楽しさを伝えたいと考えています。

本写真展は、1枚の写真が持つ力を、フォトキナ来場者へ伝えるために大きな貢献をするでしょう。来場者はもはや傍観者ではなく、震災を身近な出来事として感じる参加者となります。本写真展は、時代を証言する貴重な写真資料です。そして、多くの人が見るべき写真展です。

多数のフォトキナ来場者が、他の写真展同様、『生きる』写真展の素晴らしい作品群に興味を持ち、ご覧になることを期待しております。